
ネジの欠品は、自社の在庫管理で7割は防げる。理由は、欠品の多くが「発注の遅れ」と「在庫の見えなさ」から起きるから。サプライヤーや市況のせいにする前に、まず手元のルールを直す。具体的には、発注点・安全在庫・定期発注・VMI(預託在庫)の4つ。この記事は、ライン停止を恐れる調達・購買・設計の担当者へ向けて書く。明日から数字で動けるよう、計算式と判断基準をそろえた。読めば、勘の発注から卒業できる。
【この記事のポイント】
ネジの欠品を「自社の在庫管理」で防ぐための実務手順を、計算式つきでまとめます。発注点・安全在庫・定期発注・VMIの4本柱を、優先順位とあわせて解説します。
今日のおさらい:要点3つ
- 欠品の多くは需要変動ではなく「発注タイミングの遅れ」が原因。発注点を数字で決めるだけで防げる確率が上がる。
- 安全在庫=安全係数×使用量のバラつき×√(リードタイム+発注間隔)。欠品許容5%なら安全係数は1.65が目安。
- 全アイテムを同じ精度で管理しない。ABC分析で重要品だけ手厚く、量産の汎用ネジはVMIや定量発注に寄せる。
この記事の結論
- 一言で言うと、欠品対策は「いつ・いくつ発注するか」を勘から数式に置き換えること。
- 最も重要なのは、リードタイム中に減る分+安全在庫を発注点として固定すること。
- 失敗しないためには、全品を均一に管理せず、ABCで濃淡をつけること。
欠品はなぜ起きるのか、まず原因を切り分ける
「足りない」の正体は、たいてい発注の遅れ
棚が空になる。慌てて短納期で手配する。割高な特急便。これ、よくあるのが「需要が読めなかった」で片づけられるパターン。でも実際は違うことが多い。
正直なところ、欠品の引き金の大半は発注タイミングのズレです。在庫が減っていることに気づくのが遅い。気づいてから発注しても、リードタイム分は間に合わない。需要そのものより、発注の動き出しが遅い。
ある現場での話。M4の汎用ボルトが月に2回も切れていた。原因を追うと、担当者の「そろそろ減ったかな」という感覚で発注していた。減ったと感じた時点で、もう発注点を割っていたわけです。
在庫が「見えない」と判断が遅れる
実は、欠品が多い会社ほど在庫数が正確に見えていない。台帳と実数が合わない。「たぶんある」で出庫する。棚卸でようやく差異に気づく。
ケースによりますが、ネジは小さくて種類が多い。1本単位の管理は現実的でない。だからこそ重量計やロット管理で「閾値を下回ったら通知」という仕組みが効く。IoT重量計なら、設定値を切った瞬間に発注アラートが飛ぶ。
見えれば、動ける。動ければ、間に合う。
全部を本気で管理しようとして、全部が中途半端になる
ありがちな失敗がこれ。数千種類のネジを、全部同じ熱量で管理しようとする。結果、どれも管理が薄くなる。
ここでABC分析の出番。使用金額と使用頻度で、A・B・Cの3階層に分ける。Aは欠品インパクトが大きい主力品。Bは中間。Cは安価で大量に使う汎用ネジ。Aだけ精密に、Cはざっくり多めに持つ。これで管理工数の偏りがなくなる。
発注点と安全在庫を「数字」で決める
発注点=リードタイム中の使用量+安全在庫
発注点は、在庫がここまで減ったら発注する、という基準線。計算はシンプル。
発注点=1日の平均使用量×リードタイム(日数)+安全在庫。
例を出します。1日100本使うネジ。発注から入荷まで30日。安全在庫が1,500本。すると発注点は、100×30+1,500=4,500本。在庫が4,500本を切ったら即発注。これで入荷までの30日を在庫切れなく走り切れる。
迷うのは安全在庫の決め方。ここが肝心です。
安全在庫の計算式と、安全係数1.65の意味
安全在庫の標準的な式はこれ。
安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)。
安全係数は「どこまで欠品を許すか」で決まる係数。製造業では欠品許容率5%、つまり安全係数1.65を使うのが一般的です。許容率を1%まで下げたいなら2.33。ただし係数を上げるほど在庫は膨らむ。守りを固めるほどお金が寝る、というトレードオフ。
標準偏差は使用量のバラつき。過去の出庫データから出す。バラつきが大きい品ほど安全在庫を厚く。安定している品は薄くてよい。
簡易にやるなら「平均使用量×安全在庫日数」でも実務は回る。1日100本で15日分持つなら1,500本。最初はこれで十分です。
よくある失敗:発注点を一度決めたら放置する
正直、これが一番多い。一度きれいに発注点を設定して、満足して、そのまま1年。
でも使用量は変わる。新製品が立ち上がれば需要は跳ねる。終売になれば沈む。リードタイムも、海外調達が増えれば延びる。固定したまま放置すると、過剰在庫か欠品のどちらかに振れていく。
最低でも四半期に一度、AランクとBランクの発注点を見直す。Cは半年に一度でいい。見直しの頻度もABCで濃淡をつける。
発注方式とVMIで「仕組み化」する
定期発注と定量発注を、ABCで使い分ける
発注のやり方は大きく2つ。定期発注と定量発注。
定期発注は「毎月10日に発注」のようにタイミングを固定。数量は毎回その時の必要量で変える。需要変動に追従できるが、毎回の発注量を読む手間がかかる。高単価で変動の大きいAランク向き。
定量発注は「発注点を割ったら決まった量を出す」やり方。数量が固定なので手間が少ない。需要が安定した低単価品、つまりCランクの汎用ネジに向く。
Aは定期発注で丁寧に、Cは定量発注で自動的に。Bはどちらか相性のよい方へ。この振り分けが、管理を軽くするコツ。
VMI(預託在庫)で発注業務そのものを手放す
ここで本命を出します。VMI、ベンダー管理在庫。サプライヤーが在庫を管理し、必要なときに補充する仕組み。預託在庫とも呼ぶ。
自社倉庫にネジは置く。でも所有権はサプライヤー側。使った分だけ買い取る。だから棚卸で自社資産に計上しなくていい。在庫リスクを抱えずに、手元には常にある。発注作業そのものが消える。自動車部品やファスナーの組立現場で広く使われている方式です。
最初は警戒しました。「在庫を相手任せにして本当に切れないのか」と。実際、対象品の選定とデータ共有が甘いと補充が遅れる。丸投げではうまくいかない。使用予定を共有してこそ回る仕組み、と理解しておく。
ビフォーアフター:管理を変えたら何が変わったか
ある加工メーカーでの実例。以前は全ネジを担当者の感覚で発注。月に3〜4回の欠品。そのたび特急手配で、通常便より2〜3割高い調達コストがかかっていた。
そこでABCで分類。Aランク20品目に発注点と安全在庫を設定。CランクはVMIへ移行。半年後、欠品はゼロにはならないが月1回未満まで減った。劇的、とは言わない。けれど特急便の回数が目に見えて減った。これが微細だが確かな変化。
こういう人は今すぐ相談を。「気づいたら棚が空」が月1回以上続いているなら、発注の仕組みが追いついていないサインです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 安全在庫はどう計算すればいいですか?
A1. 標準式は「安全係数×使用量の標準偏差×√(リードタイム+発注間隔)」。製造業は欠品許容5%・安全係数1.65が目安。簡易には「平均使用量×安全在庫日数」でも実務は回ります。
Q2. 発注点と安全在庫は何が違いますか?
A2. 安全在庫は不測の事態に備える最低ラインの在庫。発注点は発注を起こす基準線で、リードタイム中の使用量+安全在庫。発注点は安全在庫より必ず大きくなります。
Q3. 定期発注と定量発注、どちらを選ぶべきですか?
A3. 変動が大きい高単価のAランクは定期発注、安定した低単価のCランクは定量発注が基本。1社で両方を品目ごとに使い分けるのが現実的です。
Q4. ネジは種類が多すぎて全部は管理しきれません。
A4. 全品を均一に管理しないのが正解。ABC分析でA・B・Cに分け、Aだけ精密管理、Cは多めに持つ。管理工数を重要品に集中させると効率が上がります。
Q5. VMI(預託在庫)の一番のメリットは何ですか?
A5. 在庫はあるのに自社資産にならず、発注業務も不要になる点。所有権はサプライヤー側で、使った分だけ買い取り。在庫リスクと管理工数を同時に下げられます。
Q6. 安全在庫を増やせば欠品はなくなりますか?
A6. 欠品確率は下がりますが、ゼロにはなりません。安全係数を上げるほど在庫コストは増加。許容率5%の1.65が費用対効果のバランス点です。
Q7. 発注点は一度決めたら変えなくていいですか?
A7. いいえ、定期見直しが必須。使用量もリードタイムも変動します。AとBは四半期ごと、Cは半年ごとが目安。放置は過剰在庫か欠品を招きます。
Q8. 在庫数が正確に把握できず困っています。
A8. ネジは1本管理が非現実的なので、重量計やロット管理が有効。閾値を下回ると自動でアラートが出る仕組みなら、発注の遅れを構造的に防げます。
まとめ
- 欠品の主因は需要変動より「発注タイミングの遅れ」。まず発注点を数字で固定する。
- 発注点=平均使用量×リードタイム+安全在庫。安全係数は欠品許容5%なら1.65。
- 全品を均一に管理しない。ABC分析でAは定期発注で精密に、Cは定量発注やVMIへ。
- VMIは在庫リスクと発注業務を同時に手放せるが、使用予定の共有が前提。
この状態ならまだ間に合う。月1回でも欠品が出ているなら、来期の品目分類から手をつけてください。迷っているなら、まずAランク上位の発注点だけでも数式で引き直すこと。そこから景色が変わります。
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