締結技術の最新動向とは?製造業で進む省力化と自動化を解説

締結技術は、いま大きく変わっています。理由は二つ。深刻な人手不足と、軽量化です。製造業の就業者数は2024年で約1,046万人。前年から減りました。ねじを締める人も、検査する人も足りない。だから締結は「速く・少人数で・データで証明できる」方向へ動いています。同時にEV化で異なる材料をつなぐ需要も急増。この記事では、省力化・自動化・代替接合・マルチマテリアル対応という4つの流れを、現場目線で一気に整理します。

【この記事のポイント】

今日のおさらい:要点3つ

  • 締結技術の最新動向は「省力化・自動化」「代替接合」「マルチマテリアル対応」「データ化」の4方向に集約される。
  • ねじをなくす方向(SPR・FSW・接着)と、ねじを賢く使う方向(自動締付・トルクデータ管理)が同時に進んでいる。
  • 自社に合うのは「全部入れ替え」ではなく、工程の弱点1か所から変える部分最適。まず締付トルクの記録から始めるのが現実的。

この記事の結論

  • 一言で言うと、締結は「人の手の勘」から「機械とデータの保証」へ移行中。
  • 最も重要なのは、流行を追うことではなく、自社の不良・工数・トレーサビリティのどこが痛いかを先に見極めること。
  • 失敗しないためには、いきなり接合方式を変えず、まず締付データの可視化から小さく始めること。

製造業の締結はなぜ今、変わっているのか

人手不足が締結工程を直撃している

正直なところ、締結は長年「誰でもできる単純作業」と見られてきました。でも現場はもう違う。2025年版ものづくり白書は、労働力不足のなか生産性向上にはロボットとAIの活用が重要、と明記しています。中小企業の人手不足感はコロナ前の水準まで戻りました。

何が起きるか。熟練者が抜けると、締め忘れや締めすぎが増える。手締めの「カチッ」という感覚は、人によって違うからです。よくあるのが、繁忙期だけ応援人員が入り、トルクがばらつくケース。これがリコールや顧客クレームの火種になります。

だから「人に頼らない締結」が求められている。安全柵なしで人の隣で働ける協働ロボットが、中小でも導入しやすい解として注目されているのも、この流れの一部です。

軽量化とEV化が「ねじ以外」を呼んでいる

実は、もう一つの大きな圧力が軽量化です。クルマの脱炭素には車体を軽くするしかない。そこで鋼板の一部をアルミ合金やCFRP(炭素繊維強化樹脂)に置き換える「マルチマテリアル化」が進んでいます。

ここで壁になるのが接合です。ボルトやリベットで点を留めるやり方は、部品を増やし重量も増やす。軽量化と相反するんですね。しかもアルミと鋼は溶接で直接くっつきにくい。異種材料をどうつなぐかが、車体設計の最重要テーマになっています。

ケースによりますが、この問題は自動車だけの話ではありません。鉄道、航空、家電。軽くしたい現場すべてに、同じ宿題が来ています。

「速さ」と「証明」が同時に要求される時代

昔は「ちゃんと締まっていればOK」でした。今は違う。締まっている証拠を出せ、と求められます。

全数のトルクをデータで保存し、製品1台ごとに紐づける。顧客からの開示要求にすぐ応える。これがトレーサビリティです。締付モニタやデジタルトルクレンチが普及してきた背景には、この品質要求の高まりがあります。

速くて、少人数で、記録が残る。この三つを同時に満たす。締結技術の最新動向は、結局ここに向かっています。

主要トレンドを4つの方向で読み解く

方向1:自動締付と省力化(ねじを賢く使う)

ねじをやめない、という選択もあります。むしろ締付を自動化し、データで固める方向です。

電動ドライバにねじ締めモニタを付ければ、モータ電流をトルク値に換算し、合否判定とデータ送信が自動でできます。無線デジタルトルクレンチなら、測定値がその場でデジタル化され、ねじ1本ごとの記録が残る。人の目視確認を減らせます。

ある部品メーカーで聞いた話です。手締め+目視だった工程に締付モニタを導入したところ、締め忘れ起因の手直しがほぼ消えた。担当者いわく「検査の人を1人、別ラインに回せた」。派手ではないけれど、効く変化です。

方向2:代替接合(ねじを使わない)

ねじそのものを減らす流れも強い。代表がSPR(セルフピアスリベット)とFSW(摩擦撹拌接合)、そして接着です。

SPRは下穴なしで板を貫いて留める機械的接合。アルミと高張力鋼のように、強度の違う材料や、溶接できない異種金属・金属と樹脂までつなげます。自動車のボディやドア、シャーシで一般的な工法になりました。

FSWは1990年代に英国で生まれた技術。摩擦熱で材料を練り混ぜて接合します。EV化での軽量化を背景に、Bosch、Chevrolet、Toyotaなどがインバータやパワーユニット部品で採用してきました。接着剤による接合も、ボルト不要で軽く、面で力を受けられるため、軽量化の切り札と位置づけられています。

方向3:マルチマテリアル対応の接合設計

ただし、警戒も必要です。異材接合は「貼れば終わり」ではない。

アルミと鉄を接触させると電食(異種金属接触腐食)が起きやすい。熱膨張率も違うので、温度変化で歪みが出る。だから実務では、SPR+接着の併用や、絶縁を兼ねた接着層など、合わせ技で設計します。産業技術総合研究所も接着・接合技術のコンソーシアムを立ち上げ、この難しさに正面から取り組んでいます。

体言止めで言えば、異材接合は「設計と材料と工法の三位一体」。単品の置き換えでは破綻します。

方向4:締結データのトレーサビリティ

4つ目はデータです。これが全方向の土台になります。

締付トルク、角度、時間を1本ごとに記録し、製品IDに紐づける。不良が出ても、どのねじが原因か後から追える。リコール時の特定範囲も狭められます。正直、ここが一番、投資対効果を説明しやすい領域です。設備の大改造なしに、ツール交換から始められるから。

よくある失敗:流行の工法に飛びついて、足元を見落とす

よくあるのが、「FSWがすごいらしい」と聞いて検討を始めるパターン。でも自社の不良の8割が締め忘れなら、まず必要なのは締付モニタです。新工法は設備・教育・量産検証に時間とお金がかかる。導入の順番を間違えると、効果が出る前に息切れします。

自社にどう取り入れるか:判断の順番

まず「痛みの場所」を1つに絞る

迷っているなら、現状の悩みを一つに絞ってください。手直しが多いのか、人が足りないのか、トレーサビリティを求められているのか。痛みによって打ち手は変わります。

悩み まず検討する方向
締め忘れ・締めすぎが多い 自動締付+締付データ記録
人手が足りない 協働ロボット+自動化
顧客にデータ提出を求められた トルクのトレーサビリティ
軽くしたい・異材をつなぎたい SPR/FSW/接着の代替接合

「全部入れ替え」を狙わない

ケースによりますが、いきなり全工程を自動化・新工法化する計画は、たいてい止まります。費用が膨らみ、現場が混乱するからです。

賢いのは部分最適。一番痛い1工程だけ変える。効果を数字で確認してから次へ広げる。省力化投資補助金のような制度(中小・中堅向けで規模に応じた支援あり)を、この小さな一歩に使う手もあります。

部品選定と工法は同時に考える

最後に一つ。締結は「ねじ単体」で決めない方がいい。

材料、表面処理、接合方法、検査までを通して見ると、最適な締結部品は変わります。アルミ相手なら電食対策の材質、薄板ならSPR向けの設計、データ管理するなら識別しやすい部品。実は、この「セットで考える」相談が、調達担当者から一番多く寄せられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 締結技術の最新動向を一言でいうと?

A1. 「省力化・自動化」「代替接合」「マルチマテリアル対応」「データ化」の4方向です。人手不足と軽量化が主因。共通するのは、速く・少人数で・記録が残る締結への移行です。

Q2. ねじはこれからなくなるのですか?

A2. なくなりません。SPRやFSW、接着が増える一方、自動締付+データ管理でねじを賢く使う方向も同時に伸びています。用途で使い分けるのが現実です。

Q3. SPRと溶接はどちらが良いですか?

A3. 目的次第です。アルミと鋼など溶接が難しい異種材料はSPRが有利。同種金属で気密や強度を最優先なら溶接が向きます。両者の併用例も多いです。

Q4. 異材接合で一番注意すべき点は?

A4. 電食(異種金属接触腐食)と熱膨張差です。アルミと鉄を直接触れさせると腐食しやすい。接着層で絶縁する、SPRと接着を併用するなどの対策が定石です。

Q5. 中小企業でも自動化や省力化はできますか?

A5. できます。協働ロボットは安全柵なしで導入しやすく、締付モニタはツール交換から始められます。省力化投資補助金など、規模に応じた支援制度も活用できます。

Q6. トレーサビリティは何から始めればいいですか?

A6. デジタルトルクツールの導入が最短です。締付トルクを1本ごとに記録し製品IDに紐づける。設備の大改造が不要なため、投資対効果を説明しやすい領域です。

Q7. 導入で失敗しやすいのはどんなケースですか?

A7. 流行の新工法に飛びつき、足元の課題を見落とすケースです。不良の大半が締め忘れなら、まず必要なのは新工法でなく締付モニタ。導入の順番が重要です。

Q8. どこから相談すればいいか分かりません。

A8. 現状の悩みを1つに絞ってください。手直し・人手・データ要求・軽量化のどれか。痛みが決まれば打ち手は絞れます。締結部品と工法をセットで相談するのが近道です。

まとめ

  • 締結技術の最新動向は「省力化・自動化」「代替接合」「マルチマテリアル対応」「データ化」の4方向。
  • 背景にあるのは、深刻な人手不足とEV化による軽量化という2つの圧力。
  • ねじをなくす(SPR・FSW・接着)動きと、ねじを賢く使う(自動締付・データ管理)動きが同時に進行中。
  • 異材接合は電食・熱膨張差に注意。設計・材料・工法をセットで考える必要がある。
  • 自社導入は「全部入れ替え」でなく、一番痛い1工程からの部分最適が成功の近道。

まずは、自社の締結工程で一番手間取っている箇所を一つ書き出してみてください。そこが、最初の一歩になります。

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