
ネジの品質証明書は1種類ではありません。確認すべきは「何を保証する書類か」。材料を保証するのがミルシート。完成品を保証するのが検査成績書。法規制への適合を示すのがCOCやRoHS証明書です。読む順番は、材質→寸法→強度区分→規格適合。この順で見れば抜けが出ません。逆に種類を混同すると、書類はあるのに必要な保証が抜ける。本記事は各書類の違いと使い分けを、現場の確認手順に沿って解説します。
【この記事のポイント】
ネジの品質証明書には「材料」「製品」「法規制」の3系統があります。それぞれ保証する範囲が違うため、用途に合った書類を指定しないと受入検査で詰まります。本記事では4種類の書類の違いと、現場での見方・確認ポイントを実例とともに整理します。
今日のおさらい:要点3つ
- ミルシートは「材料」、検査成績書は「完成品」を保証する別物。混同すると保証が抜ける
- COCは規格・契約への適合宣言、RoHS証明書は有害物質規制への適合。法規制対応はこの2つで担保
- 確認は「材質→寸法→強度区分→規格番号」の順。1項目でも図面と不一致なら受入NG
この記事の結論
- 一言で言うと、品質証明書は「何を、誰が、どの規格で」保証したかを読む書類。
- 最も重要なのは、図面・注文書の規格番号と書類の規格番号が一致しているか。
- 失敗しないためには、発注時点で必要な書類の種類と発行レベルを指定すること。
品質証明書の4種類と保証範囲の違い
ミルシートと検査成績書は別物
正直なところ、この2つを同じものだと思っている調達担当は少なくありません。実は保証する対象がまったく違います。
ミルシートは、鉄鋼メーカーが材料出荷時に発行する書類。正式名称は「鋼材検査証明書」です。製造ロットごとに化学成分、引張強さ、降伏点、伸びなどを規格値と対比して記載します。つまり「素材」の品質を証明する。
一方、検査成績書は完成したネジそのものを検査した結果。寸法、外観、バリやクラックの有無、ねじ精度などを記録します。素材ではなく「製品」を保証する書類です。
よくあるのが、「ミルシートさえあれば品質は安心」という思い込み。でも、ミルシートが保証するのは元の鋼材だけ。加工後の寸法不良やねじ山の欠けは、検査成績書がないと拾えません。両方そろって初めて、材料から完成品まで一気通貫の保証になります。
COCとRoHS証明書が担う領域
材質と製品の保証だけでは足りない場面があります。法規制と契約適合です。
COC(Certificate of Conformity/適合証明書)は、「この製品は注文要件や指定規格に適合しています」という適合宣言。書類の様式は決まっていませんが、何の規格・契約に適合しているかを明示するのが要点です。
RoHS適合証明書は、EUのRoHS指令への適合を示す書類。現在は鉛・カドミウム・水銀など6物質に、2019年7月22日から4種のフタル酸エステル類が加わり、計10種類の有害物質が制限対象です。ネジの場合、本体よりも「めっき」が論点になりやすい。めっき液に規制物質が含まれるケースがあるためです。
ケースによりますが、海外向け製品や電子機器に組み込むネジでは、ミルシート+検査成績書+RoHS証明書の3点セットを求められることが増えています。
用途別・必要な書類の組み合わせ
どの書類が要るかは、納品先と用途で決まります。判断の目安を整理します。
| 用途・納品先 | 主に必要な書類 |
|---|---|
| 一般機械・社内組立 | 検査成績書(寸法・外観) |
| 公共工事・建設構造物 | ミルシート(材料保証) |
| 自動車・電子機器 | ミルシート+検査成績書+RoHS |
| 海外輸出・EU向け | 上記+COC(規格適合宣言) |
警戒したいのは、「全部つければ安心」という発想。書類が増えるほど発行コストと納期は延びます。実際、第三者立会いが必要な証明書は、社内発行品より発行に1〜2週間余計にかかることもある。必要十分を見極めるのが調達の腕の見せどころです。
書類の見方と確認すべき重要ポイント
材質・規格番号の照合が最優先
ある精密機器メーカーの受入現場での話。書類はそろっていたのに、組立後に締結部が緩む不具合が発生しました。原因を追うと、図面はSUS304指定なのに、納入されたネジのミルシートはSUS303。担当者は「ステンレスだから同じだろう」と書類の規格番号を読み流していたのです。
この一件で、現場の品質責任者がこぼした一言が忘れられません。「書類が揃ってることと、中身が合ってることは別だよ」。まさにその通りで、書類の存在チェックと内容照合は別の作業です。受入では後者を省いてはいけません。
これが照合不足の典型。確認の第一歩は、図面・注文書の材料規格番号と、書類に記載された規格番号が完全一致しているかです。JIS指定ならミルシートの検査規格もJISでなければなりません。
材質名だけでなく、規格番号の末尾まで見る。SUS304とSUS304L、S45CとS50C。一文字違いが強度や耐食性を左右します。「だいたい合ってる」は受入検査では通用しません。記載されているロット番号や証明書番号を控えておくと、後でトレーサビリティをたどる際にも効きます。
寸法・強度区分の読み取り方
次に見るのが寸法と強度です。検査成績書では、図面の公差内に実測値が収まっているかを確認します。
ネジ特有のポイントが強度区分。鉄製ねじには「4.8」「8.8」「10.9」など10段階の区分があります。実はこの数字、ただの記号ではありません。8.8なら、最初の8が引張強さ800N/mm²、次の8がその80%(640N/mm²)が降伏点という意味。自動車や一般機械は8.8、重構造物は10.9以上が目安です。
書類の強度区分が図面指定と違えば、たとえ寸法が合っていても使えません。「数字が小さい区分でも入るからいいや」では、締結部が想定荷重で破断するリスクを抱え込むことになります。
EN10204の発行レベルを見落とさない
海外規格に触れる調達担当が見落としやすいのが、証明書の「発行レベル」です。
欧州規格EN10204は検査文書の種類を定めており、よく出るのがType3.1とType3.2。Type3.1は製造者の製造部門から独立した品質部門が発行する証明書。Type3.2は、それに加えて第三者検査機関の検査員が立会い、両者が署名するより厳格なレベルです。
ここを取り違えると痛い。注文書がType3.2なのに、納入されたのがType3.1。書類は届いたのに「規定レベル未達」で受入できず、再発行待ちで納期が2週間飛んだ——という相談は実際に寄せられます。
ビフォーアフターで言えば、発注時点で「Type3.2、第三者立会い必須」と仕様書に明記しておくだけで、この手戻りはほぼ消えます。たった一行の指定が、後工程の数週間を守る。
よくある質問(FAQ)
Q1. ミルシートと検査成績書、両方必要ですか?
A1. 用途次第です。材料保証だけでよければミルシート、完成品の寸法保証が要るなら検査成績書。自動車・電子機器など重要部品では両方そろえるのが基本です。
Q2. COCとミルシートはどう違いますか?
A2. ミルシートは材料の試験値そのものを記載する書類。COCは「注文・規格に適合している」という適合宣言です。COCは数値より「何に適合しているか」を示す点が違います。
Q3. RoHS証明書はどんなネジで必要ですか?
A3. EU向け製品や電子機器に組み込むネジで求められます。特にめっき品が要注意。RoHS指令は計10種類の有害物質を制限しており、めっき液由来の混入が論点になります。
Q4. ミルシートの見方で最初に確認すべきは?
A4. 規格番号です。図面の材料規格番号と一致しているか最優先で照合します。次に化学成分、引張強さ、降伏点が規格値内かを確認。3点で材料品質を判断できます。
Q5. 強度区分の「8.8」は何を意味しますか?
A5. 最初の8が引張強さ800N/mm²、次の8がその80%が降伏点という意味です。8.8は一般機械、10.9以上は重構造物向け。図面指定と一致しているか必ず確認してください。
Q6. EN10204のType3.1と3.2の違いは?
A6. 3.1は製造者の品質部門が発行、3.2は第三者検査機関が立会い署名します。3.2の方が厳格で発行に時間がかかり、社内発行より1〜2週間長くなることもあります。
Q7. 検査成績書は誰が発行しますか?
A7. 製品を加工・製造したメーカーまたは商社です。材料メーカーが出すミルシートとは発行元が異なります。完成品の寸法・外観検査の結果を記録した書類です。
Q8. 書類はあるのに受入で止まるのはなぜ?
A8. 種類や発行レベルの不一致が大半です。規格番号違い、Type指定違い、必要書類の欠落など。発注時に種類・レベル・規格番号を仕様書で明記すれば、ほぼ防げます。
まとめ
- ネジの品質証明書は「材料(ミルシート)」「製品(検査成績書)」「法規制(COC・RoHS)」の3系統。保証範囲が違うため使い分けが必須。
- 確認は「材質→寸法→強度区分→規格番号」の順。図面の規格番号との完全一致が受入可否を分ける。
- 海外規格ではEN10204の発行レベル(Type3.1/3.2)まで指定すること。発注時の一行が後工程の数週間を守る。
書類の種類選びや発行レベルの指定で迷っているなら、図面と用途を手元に整理してから動くのが早道です。「どの証明書を、どのレベルで指定すべきか分からない」——この状態のまま発注すると受入で必ず止まります。仕様が固まりきっていない今なら、まだ手戻りなく組み直せます。
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