産業用断熱材|発泡系(ウレタン・フェノール)の保冷・低温配管での選び方と注意点

保冷・低温の現場なら、発泡系断熱材が第一候補です。理由は熱伝導率が小さく、低温域で性能が安定するから。対象は冷水・冷媒・低温配管、保冷タンクを扱う設備保全・設計担当の方。硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、発泡ポリスチレンが代表格で、熱伝導率は条件にもよりますが0.02〜0.04W/(m・K)程度が目安です。ただし高温域には不向き。可燃・難燃、使用温度上限、そして防湿。この3点を外すと、せっかくの断熱が一気に台無しになります。

【この記事のポイント】

発泡系断熱材は「低温・保冷に強い」断熱材です。無機繊維系(グラスウール・ロックウール)が高温・耐火に強いのに対し、発泡系は冷やす現場が得意分野。ただし万能ではありません。使用温度上限、難燃性、そして保冷では絶対に外せない防湿層。この記事では、現場で実際に効いてくる判断基準を、失敗例も交えて整理します。

今日のおさらい:要点3つ

  • 発泡系は低温・保冷に強い:熱伝導率が小さく、冷水・冷媒・低温配管や保冷タンクで力を発揮する。高温域には向かない。
  • 保冷は防湿層が必須:断熱材の外側で結露・吸水を防がないと、性能低下とCUI(保温材下腐食)を招く。これが最大の落とし穴。
  • 選定軸は4つ:使用温度域・防湿・難燃性・コスト。数値はあくまで目安で、最終判断は条件次第。

この記事の結論

「冷やす配管・タンクなら発泡系、熱い配管なら無機繊維系」が大まかな住み分けです。発泡系の中でも、難燃性を重視するならフェノールフォーム、汎用的な保冷なら硬質ウレタンフォーム、コスト重視で温度がそれほど低くないなら発泡ポリスチレンといった使い分けになります。そして保冷では断熱材そのものより防湿層の施工品質が寿命を決める、というのが正直なところです。

発泡系断熱材とは?保冷・低温配管で選ばれる理由

発泡系の正体と、低温で強い仕組み

発泡系断熱材は、樹脂の中に細かい独立気泡を無数に閉じ込めた素材です。気泡の中の空気(あるいは発泡ガス)が熱を伝えにくいので、薄くても断熱性能が高い。これが低温・保冷域で選ばれる理由です。

代表的なのは次の3つ。

  • 硬質ウレタンフォーム:保冷の定番。熱伝導率が小さく、現場発泡(吹き付け)もできる。
  • フェノールフォーム:発泡系の中では難燃性に優れ、発煙も少なめ。熱伝導率も小さい。
  • 発泡ポリスチレン(EPS/XPS):吸水しにくく安価。建築でもおなじみ。

無機繊維系(グラスウール・ロックウール)と比べると違いがはっきりします。無機繊維系は数百℃の高温配管やボイラー周りに強く、不燃。一方の発泡系は、そこまでの高温には耐えられない代わりに、低温側で熱伝導率が安定し、施工後の収まりも良い。「熱いものを包むのが無機繊維系、冷たいものを包むのが発泡系」と覚えておくと、最初の振り分けはほぼ間違いません。

現場事例:冷水配管の結露が、断熱材の選定で止まった

以前、ある食品工場で冷水(約5℃)配管が真夏に汗だくになり、床に水たまりができるという相談を受けたことがあります。最初は「断熱材が薄いのでは」という話だったのですが、現地で見ると、断熱材の厚みより外側の防湿処理が甘かった。継ぎ目から湿気が入り、内部で結露して断熱材が水を吸い、性能が落ちて、また結露する。悪循環でした。

このときは硬質ウレタンフォームに防湿層をきちんと巻き直し、継ぎ目を目張りしたら、表面の結露がほぼ止まりました。実は、断熱材の種類を変えるより、防湿の納まりを直すほうが効いたのです。よくあるのが「冷えないのは断熱材のグレードのせい」という思い込みで、本当の犯人が湿気だった、というパターンです。

よくある失敗:使用温度上限を見落とす

発泡系で一番怖いのが、使用温度上限の見落としです。発泡系は樹脂なので、高温には弱い。例えば発泡ポリスチレンは比較的低い温度で軟化・変形してしまいます。硬質ウレタンフォームやフェノールフォームはもう少し上まで使えますが、それでも高温配管に使うものではありません。

ケースによりますが、「保冷用に在庫していた発泡系を、急ぎだからと温水配管にも流用してしまった」といった例は実際にあります。しばらくして変形・劣化が出てトラブルに、という流れ。低温と高温で材料を取り違えないこと。これは基本ですが、現場が混在していると意外とやってしまいます。

発泡系を選ぶときの判断基準|防湿・難燃・温度上限・コスト

防湿層は「あって当たり前」ではなく「設計する」もの

保冷の世界では、防湿層は断熱材とセットで初めて意味を持ちます。低温配管は表面が周囲より冷たいので、空気中の水分が必ず結露しようとする。断熱材の外側(暖かい側)に防湿層を設けて、湿気が内部に侵入するのを止める。ここが甘いと、断熱材が水を吸って熱伝導率が悪化し、さらに金属表面では結露水が溜まってCUI(保温材下の腐食)の原因にもなります。

国土交通省の機械設備工事に関する標準仕様でも、保冷では防湿層・防湿材の施工が求められており、業界でも保冷の基本として広く共有されている考え方です。正直なところ、発泡系のグレード選びで悩む前に、防湿をどう納めるかを先に決めたほうが、トラブルは減ります。

難燃性とコスト:フェノールか、ウレタンか、EPSか

発泡系は樹脂なので、燃えやすさは無視できません。難燃グレードや不燃材との組み合わせで対応しますが、素材ごとに傾向があります。フェノールフォームは発泡系の中では難燃・低発煙に優れる一方、コストは上がりがち。硬質ウレタンフォームはバランス型。発泡ポリスチレンは安価で吸水しにくいものの、難燃性や温度上限では譲る場面があります。

迷うのは、難燃性とコストがぶつかるときです。「予算は抑えたい、でも防火区画に近い」——こういう現場では、安いEPSで通したい気持ちと、フェノールにすべきという判断の間で揺れます。ケースによりますが、人がいる・避難経路に近い・他設備に延焼リスクがある場所では、コスト差を飲んでも難燃性を優先したほうが後悔は少ない、というのが経験的な落としどころです。

現場事例+比較:保冷タンクで発泡系、蒸気配管で無機繊維系

あるプラントで、保冷タンクと近くの蒸気配管を同じ時期に更新したことがありました。保冷タンク(低温側)は硬質ウレタンフォーム+防湿層、隣を走る蒸気配管(高温側)はロックウール。同じ「断熱」でも、求められる性能が真逆なので、材料を分けるのは自然な判断です。

比較軸 発泡系(ウレタン・フェノール等) 無機繊維系(グラスウール・ロックウール)
得意な温度域 低温・保冷 高温・保温
熱伝導率 小さい(低温で安定) やや大きめ
燃焼性 樹脂系、難燃グレードで対応 基本的に不燃
吸水・防湿 防湿層が必須 吸湿に注意

実は、この「分けて使う」考え方ができていない現場ほど、流用ミスや結露トラブルが起きやすい印象があります。一覧で温度域を共有しておくだけで、発注時の取り違えがかなり防げます。

よくある質問

Q1. 発泡系と無機繊維系、結局どちらを選べばいい?

A1. 冷やす配管・タンクなら発泡系、熱い配管なら無機繊維系が基本です。温度域での住み分けが第一。迷ったら使用温度から決めてください。

Q2. 保冷で防湿層は本当に必須ですか?

A2. はい、必須と考えてください。防湿が甘いと結露・吸水で性能が落ち、CUIの原因にもなります。断熱材より先に防湿の納まりを設計するのが安全です。

Q3. 発泡系の熱伝導率はどのくらいですか?

A3. 条件によりますが0.02〜0.04W/(m・K)程度が目安です。製品・温度・経年で変わるため、最終的にはメーカーの実データで確認してください。

Q4. 発泡系は高温配管に使えますか?

A4. 基本的に不向きです。樹脂なので使用温度上限が低く、高温では変形・劣化します。高温側は無機繊維系を選んでください。

Q5. 難燃性を重視するなら何を選べばいい?

A5. 発泡系の中ではフェノールフォームが難燃・低発煙で有利です。ただしコストは上がります。設置場所の防火条件と予算で判断してください。

Q6. CUI(保温材下腐食)はどう防ぐ?

A6. 湿気を入れないことが第一です。防湿層を確実に施工し、継ぎ目を塞ぎ、結露水が溜まらないようにします。定期点検で吸水の有無を見るのも有効です。

Q7. コスト重視なら発泡ポリスチレンで十分?

A7. 温度がそれほど低くなく、難燃要件が緩いなら有力候補です。ただし温度上限と難燃性は譲る場面があるので、条件を満たすか必ず確認してください。

Q8. 既存の保温材から保冷用に替えるとき注意点は?

A8. 用途が逆なので材料を取り違えないことです。高温用と低温用を混在管理していると流用ミスが起きがち。温度域の一覧で発注を統一すると安全です。

まとめ

発泡系断熱材は、保冷・低温配管・冷媒・保冷タンクといった「冷やす」現場の主役です。熱伝導率が小さく低温で安定する一方、樹脂ゆえに使用温度上限・難燃性には注意が必要で、何より保冷では防湿層が性能と寿命を左右します。無機繊維系との住み分けは「冷たいものは発泡系、熱いものは無機繊維系」。選定軸は使用温度域・防湿・難燃性・コストの4つで、数値はあくまで目安、最終判断は現場条件次第です。

正直なところ、材料選びそのものより、防湿の納まりや温度域の取り違え防止のほうが、現場のトラブルを減らす近道だったりします。保冷・低温の断熱材選定や、結露・CUIで悩んでいる箇所があれば、図面や現状の写真を手元に、一度整理してみてください。条件を並べるだけで、最適な一手が見えてくることは少なくありません。迷ったときは、製造業の断熱・保温に詳しい専門家へ相談するのが、遠回りに見えて一番確実です。

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